おわかれの日

青木門斗

ひとがきた

そこのいえから あそこのいえから

ごきんじょさんから ふたりずつ

わたしのいえに みんなきた

「世話になりました」

わたしは となりであたまをさげる

ひとはどんどんふえていく

わたしは それをながめている

「よろしくお願いします」

わたしは もいちどあたまをさげる

ここはいつものいえじゃない

わたしは おきょうをきいている

となりに おかあさんがいた

だいどころに しらないひとたち

あずきと ぱいんと それから、かぼちゃ

おいしくないな

わたしは となりであたまをさげた

ごはんをたべて おはなしをして

そして やがて むかえにきた

くろいくるまが

おばあちゃんを。

さようなら

もう、いえにひとはいない

ここはいつものいえじゃない

もう、おばあちゃんはいない

そとへいく

いえからはなれた きれいなたてもの

たまにしかあわない しんせきのひとも

みんなそこに あつまってた

「世話になりました」

わたしは となりであたまをさげる

ひとはどんどんふえていく

わたしは それをながめている

「よろしくお願いします」

わたしは もいちどあたまをさげる

まえのほうのいすにすわることに

わたしは おきょうをきいている

となりにはおかあさんがいた

まわりに しらないひとたち

つくえに おさかな たくさん、ならぶ

「なつかしいね」

わたしは みんなのはなしをきいていた

ごはんをたべて おはなしをして

そして やがて むかえにきた

くろいくるまが

おばあちゃんを。

さようなら

わたしも いえにかえるよ

おばあちゃんに おわかれをつげて

もう、おばあちゃんにはあえない

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